エッセイ「テニスボーイ・アラウンド・ザ・ワールド」




自分の旧ブログで、テニスにまつわる映画や本を紹介する企画〔tennis×culture〕というものをやっておりました。この記事は時事性のないものなので、このブログにもアップしておきたいと思います。

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今回は、村上龍著「テニスボーイ・アラウンド・ザ・ワールド」を紹介したいと思います。

これは、村上龍によるホット・ドッグ・プレスの’86年4月10日号~’87年5月10号の連載記事を中心に書籍としてまとめたもので、この間のグランドスラムやマスターズなどを観戦しまくっていた彼の観戦記。写真も全て彼撮影によるもの。

当時活躍していたイワン・レンドル、アンリ・ルコント、ボリス・ベッカー、クリス・エバート、シュテフィ・グラフ・・・といった名選手が続々登場し、試合をテクニカルな感じで紹介したりもしているのだが、この本の魅力は何といっても筆者が作家・村上龍ということである。

一時期の彼が相当テニスに入れ込んでいたことは、この本以外にも「テニスボーイの憂鬱」「快楽のテニス講座」といった本を出していたことは明らかなんだけど、その理由は、

百二十八選手がトーナメントで戦う個人競技は恐らくテニスだけだろう。  (途中略)
そこには開会式も閉会式もないが、勝者と敗者はドライにまたシリアスに選り分けられながら、決勝というフィナーレを迎える。当然数々のドラマが生まれるが、それは情緒的なものでは決してなく、質の高い祝祭となっていくわけだ。
私が、テニスそのものに魅かれたのはジョン・マッケンローという個性によってである。
そして、海外のトーナメントを回る直接のきっかけとなったのは、フランスのアンリ・ルコントという美しい天才プレイヤーに魅せられたからだ。マッケンローの幻影と、ルコントの超攻撃的型テニスを追って、私の旅は始まったのである。  (以上、序・メルボルン より引用)

という一節に手がかりがあるような気がする。

「個人競技」ゆえに、競技にプレイヤーごとの個性が色濃く反映され、それが彼を魅きつけたのだろう。

・・・というような「村上龍テニス論」はまぁいいとして、彼が書く観戦記は本当に面白い。

彼は“テニス記者”ではないので、例えばテニス雑誌の記事に求められるようなナンバーワン選手ありきで試合を見たりしない。
あくまでも彼のお気に入り(ルコント)を観戦し、プレス席から平気で野次も飛ばす。ニューヨークで知り合ったチャイナ・ガールに入れ込み、余ったチケットをスッチーに定価で売りつけ、ベイクドポテトとビール片手に観戦し、その帰りにはダンスホールに寄る・・・。

とまぁこれはほんの一例なのだが、やんちゃ(といっても当時で30過ぎだが)なテニスファンの視点で、率直に選手やテニス界のことを語り、賞賛し、こき下ろす。

もちろん開催地に関する旅行記としても楽しめるし、プレイや街に関する表現なんかもいちいち詩的で、1冊で本当にいくつもの味わいがある。

テニスの書籍を多く読んでいる訳ではないので、知らないだけかもしれないが、この本は相当異色なテニス本であると思うし、結論としては、村上龍が好きなテニス好きの人は絶対に読んでおくべき。
(まぁそういう人はもう読んでるでしょうが・・・)

私が古い選手のことをほとんど知らないので、ピンとこないところもあったのだけど、そういうことも知識として分かるようになってきたら、もう1度読み直すつもりです。

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ところで、今も彼がテニスのファンなのかどうかは分からないけど、もしそうだとしたら、どの選手が好きなんだろうか?
プレイスタイルで、というのはいまいち思い浮かばないのだけど、なんとなく思うのは、ナダルのことは好きじゃないだろうなということ(笑)




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